津嘉山正種ひとり語り『命口説』 in 未来創造センター 多目的ホール

12月議会一般質問もひと段落した週末に、津嘉山正種ひとり語り『命口説』を観にいってきました。

『命口説』はあらすじを読んで観に行きたいと気になっていました。
14日夕方の『瀬長亀次郎物語』は大盛況で、新たに設けた席もいっぱいになっていたそうです。

人の入りは『瀬長亀次郎物語』ほどではなかったと思うのですが、周囲から伝わる涙の気配や、劇のあとの鳴りやまない拍手など、強い思いの残る舞台でした。

嘉手納飛行場で「基地観光ガイド」をする老人の物語。
戦時中、軍事飛行場のためにきび畑が接収されてきたこと、また家族が米軍統治下の抑圧のもとで荒んだ暮らしを余儀なくされていくことなどが口述されていきます。

とくに老人の孫は、来る新しい時代に向かい、苦しみの中にいる「沖縄」よりも、基地派生の仕事や文化を享受していく。
戦前と戦中、そして米軍統治下の時代を知る老人からは、この苦しみが、若い世代にふるびた言葉として伝わらない悲しみも伝わってきます。

そして「基地観光ガイド」――嘉手納基地に飛来する戦闘機の爆音を聞ける場所に立って、老人は本土からの観光客を相手にガイドをして、日銭を稼いでいる。
それがいびつな構造として浮かび上がってい来るのが、終盤のシーンでした。

もし観劇の機会がある方は、ぜひ津嘉山正種ひとり語り観に行ってくださいね。

ryukyushimpo.jp

沖縄にある複雑な心の構造を、この物語の中に濃縮して含めています。
米軍基地を遠くした宮古島でも、この複雑さが受け止められたのかしらという思いは残りました。

老人の孫は、新しい時代を向いて生きているようで、されども度々お金をせびらないと自由になれない緩やかな貧困の構造の中にいまだ置かれています。

いつか見たドキュメンタリーの中で、米国人の方が「沖縄の人は優しすぎる」と話す場面がありました。
他所から見た時によく見える不条理があります。
そこから声を上げるときに、嘲笑され、軽んじられ、ある時はなじられ。

どこまで傷付きながら歩いていけばいいんだろうと思うときがあります。
沖縄の声は、つねにつぶされ続ける。
その歴史の繰り返しが今も続いている。

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津嘉山正種ひとり語り『沖縄の魂ー瀬長亀次郎物語』の動画は「青年座」チャンネルで観れます※

米軍統治下から日米地位協定へ。
未だ基地負担の押し付けは終わらず、むしろ増強する一方です。
また、もたらされる基地を振興として歓迎する人たちもいます。

しかしながら不条理の楔はいまだ打ち付けられたまま、従わなければ交付金が減らされるものと豪語される中、劇中の老人の孫が自分のルーツにある悲劇に気づくように、私たちが本来あるべき自治権に気づくことはできるのでしょうか。

素晴らしい内容であったことは変わりないですが、その分、おのれにも問いが返ってくるような一人劇でした。