2023年12月24日まで、初台駅にある東京オペラシティ アートギャラリーで石川真生さんの写真展が開催されています。
東京への遠征ついでに、真生さんの写真展へも立ち寄りしてきました。
沖縄で同時代を生きる人々を取り繕いのない眼差しで撮る。
日本が高度成長を遂げていく傍らで、米軍統治下におかれた沖縄は米軍基地とともにあり、本土復帰となったのちも、やまととの間に歴史の溝はうめられないまま今日を迎えています。
沖縄の経験してきた歴史体験は、日本の主流のものの見方の中に、語られることはほぼなかったと思います。
東京に長らく生活してきた私が、沖縄が持つ独自の歴史をきちんと知ったのは、宮古島に帰ってきて、いくつかの映画を見たことがきっかけでした。
沖縄にいてさえ、関心がなければ、沖縄の戦後史を知るきっかけは少ないのです。
写真は、その光景を投げ出したまま沈黙していますが、準備された作品リストが丁寧に解説しています。
土曜日の午前中、写真展に訪れた人たちは、手元の作品リストと写真を見比べながら、熱心に解説を読み込んでいました。
今を生きることは、歴史を生きること。
望むと望まずと関わらず、歴史の中におぼれながら。
その視点はやがて、今、沖縄や島々で進行中のミサイル部隊配備と、それにあらがう人々へと向かいます。
「私に何ができるか」としたタイトルが、重たくのしかかってきます。
病をおして撮影に飛び回る石川真生さんのいう「私に何ができるか」という問い。
命を削るように重いカメラを構えて、なおその言葉を選ぶということ。
私たちは真生さんの写真から、いったい何を受け取るだろうか。
笑顔とユーモアのある表現の中で、刺すような痛みがそこ此処に潜んでいる。
これは私たちの痛み。
あなたはそれをどう受け止めるだろうか。
たくさんの人が写真展を見に来ていると聞きました。
共感もあれば反発もあったかもしれません。
けれどここにあるのは、表では語られない沖縄の歴史です。
感じた違和感を、いつか解きほぐすように、沖縄のことを知る機会に繋がっていくといいなと思います。
私が東京に出て、初めて行った美術展も東京オペラシティ アートギャラリーでした。
選りすぐりの気鋭、新鋭作家を選んで展示するギャラリーです。
その中に写真家・石川真生さんの名前が連なるときに、どういう意味があるのかを私なりに感じています。
今という時代を深くえぐる作家が、まさに石川真生さんであるということです。
と、そんなことを勝手ながら感じて、写真展のために東京に行きたいと思っていたところ、予定が重なって、思いもよらず足を伸ばせたことは僥倖でした。
12月中旬まで開催しています。
お近く、遠くの方も、ぜひ観に行ってほしい石川真生さんのエネルギッシュな写真展です。