平良給食センター視察:地産地消推進の取り組みの模索

長引くコロナ禍の影響から食材の需要が減り、一次産業の支援として農水産業の地域内での消費が各地で模索されています。

2020年度、農水省新型コロナウイルス対策として、「国産農林水産物等販売促進緊急対策事業」1400億円を計上。学校給食に提供する経費を補助する施策をおこないました。

沖縄県でも県産食材の利用促進として学校給食を挙げていますが、課題が多いのも事実。

一次産業が盛んな宮古島市でもコロナ禍における需要減はシビアな問題です。地産地消として学校給食とつなぐことができれば良いのですが、どの程度可能なのでしょうか。

  • #01

ということで、この日は仲里市議について給食センターの視察へ!
給食時間に合わせてせわしなく稼働する午前中、調理場には立ち入りできませんが、外からの見学や、担当の方のお話をお聞きしてきました。

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実は宮古島市、すでに島産野菜は学校給食に取り入れられています。
農家個別ではなく、卸業者と連携することで、およそ4500食ほどに必要となる数を担保しているようです。

しかし野菜の収穫は冬が好ましく、夏になると台風と干ばつで野菜の出荷が厳しくなる現状、安定した数の供給ができるかという問題があります。
一方で夏休みや冬休みなど長期休暇に入ると、学校が休みに入り給食がなくなるため、農家の収入が途切れてしまうことに。このデコボコした需要と供給の関係を均一にしていく検討も必要そうです。


では水産物はどうでしょう。2020年、宮古島市新型コロナウイルス対策の一環として、すでに学校給食での提供をおこなった実績があります。

ポイントとして、

  • 旧郡部での提供に限り、提供数の多い平良地区は対応しなかった。
  • 水揚げされた魚を、漁業組合では柵どりまでできる。
  • 冷凍加工が可能な別事業者で加工を対応した。

給食センターとしては、柵の状態で届けられても、4500食分に切り、味付けして調理する手間をとることは現実的ではないので、揚げるなりする直前の状態まで加工されていることが望ましいとのこと。

しかし漁港側でその体制を確保することは容易ではないため、加工は専門の事業者に依頼するほうが、安全性が高いといえるかもしれません。一次産業と学校給食をつなぐ加工体制の確保がひとつ大きな課題だと感じました。

  • #02

地産地消を学校給食で担おうとすると、もうひとつ課題があります。

学校に調理場が併設される自校方式は、沖縄県でも年々減少する傾向にあります。代わりにセンター方式が主流になりつつある昨今。しかし、少量であったり規格外の食材を受け入れるにあたって、一般的には自校方式のほうが柔軟に対応できるようです。

食育や地産地消の観点から、自校方式へと見直す自治体もあるといいます。

一方、学校はじめ各施設の統廃合を進めてきた宮古島市は、旧郡部の学校における自校方式をやめ、平良地区と統合してより大きな食品加工施設をつくる方針にあるのだそうです。

最近おぼろげに分かってきたのですが、施設の老朽化が進む中、市の持ち出しで修繕するよりも、国の補助をもらって建物を新設するほうが財政観点からは合理的という面もあるようです。一方で新たに公共施設をつくると、今までの建物は不要になり、維持費削減のため県外法人に無償譲渡するという流れが、本市においてできつつあるように思います。

あまりに財政面の合理化だけに焦点をあてすぎて、地域に住む人々にとって本当に住みよい町とはどんな町なのか、市のグランドデザインをつくる視点がこれまでかけてきたのではないでしょうか。


少々脱線しましたが、給食センターと産業振興局へ聞き取りをする中で、少し盛り上がったのが、ヤギミルクの話題でした。

ヤギの飼育もさかんな宮古島ですが、食肉の需要は限定的でもあります。より市場の大きな沖縄へ出荷するとなると、輸送費がかかり、もうけは減ってしまいます。では大型ヤギの飼育に切り替えていけば、一頭あたりの価格をあげることができるのではないか? など新たな取り組みが始まりつつあります。

その中で最近、地域紙にとりあげられたのが、高知県の川添牧場。ここのヤギミルクが学校給食として提供されたというニュースでした。宮古島市で搾乳の目的でヤギの飼育をしている農家さんの話はまだ耳にしたことはありませんが、このあたりも今後の可能性として興味深いところです。

  • #03

今日のまとめです。
水産業地産地消をつなぐためには、

  • 需給バランスを整える必要がある→ 食材の冷凍・保管など、ストック化の必要性
  • 加工のための技術・設備・人材が必要(飲食店、ホテル、給食などに辿り着けるよう)
  • 自校方式のほうが地産地消と相性が良い。

地域市場が限られてしまう離島において、しかし島外出荷すれば輸送費が上乗せになる課題があります。その点で学校給食は安定した供給先のようにみえますが、さまざまな品目を取り入れて献立を組み立てていく中で、地域野菜・水産物の使用は、月に一、二回など、限定的になってしまう可能性はあります。

まずは学校給食という模索ではありますが、島内の観光施設や飲食店、ホテルなどの供給ルートを整えることの価値もあるのではないか?という思いも持ちました。あるいはやはり島外や海外への販路をひらく王道路線も、検討から外せないのかもしれません。

近く会派での六次産業の勉強会も話が出ているところです。どこに力をいれれば市全体として効率的に効果を出せるのか、もう少し検討していきたいと思います。