来間島 長間浜里道改修工事について

来間島 長間浜へ続く里道の整備(来間島の写真はすべてシュノーケリングガイドの清水靖さん提供)

来間島の長間浜に向かう里道が、コンクリート階段へと作り替えられてしまっていると話を聞いて、少し調べたりしましたので、分かる範囲で現状を記録しておきたいと思います。

来間大橋から島に渡り、小さな集落をぬけて、サトウキビ畑に囲まれた道の先にある長間浜は、人の手のほぼ加えられていない自然の風景を残した砂浜です。
夏至でも冬至でも、晴れていれば夕日が沈むのを見ることができるため、夕暮れになると自然と人が集まってきます。

長間浜につながる道は、人の通る跡からできたけもの道。宮古島でもこういう場所は少なくなりました。その長間浜にコンクリートの階段設置の工事がおこなわれていることが、今回の問題の発端です。

里道整備の許可がなぜ下りてしまったのでしょう。
経緯をまとめると次のようになります。

この道は里道で、市の所有となります。
近隣にオープンしたホテル、シーウッドリゾート来間島の事業者でもある飯田産業により、事業者負担で里道の整備をしたいと申し出があったということです。

2021年夏前に、事業者より市へ里道整備の申請をおこないますが、宮古島市は隣接する土地に共有地があるため、来間自治会へ話を通すように依頼しました。

2021年冬頃、来間自治会との話し合いを経て、再度申請。宮古島市もこのことを受けて里道整備の許可を出したということです。

2022年3月事業者より、当初、擬木を想定していた階段から、擬木では老朽化が早く安全性に関わる可能性があるとして、コンクリートの階段へ変更の申し出がなされ、安全性観点ということでは市として断る理由がないと判断して許可をしたということ。

当初は擬木の階段を想定していたが、安全性を理由としてコンクリートの階段へと変更となった。

工事が進むにつれ、工事現場の様子が砂浜を訪れる人の目にふれ、宮古島市へと問い合わせの電話がどっと増えたようです。

来間自治会からも懸念の声があがっていて、宮古島市としては現在、事業者と自治会との両者で話し合いをするようにお願いをしているところのようです。

ここ10年ほどで宮古島の海岸線の風景が大きく変わってしまったと言われます。青い海が宮古島の魅力とは言いますが、ビーチを切り開いてコンクリートを敷いてしまうと、その風景は宮古島でなくても構わないものになってしまいかねません。

島に住む一個人の心情としては、もとの砂浜の道のままであってほしいと思いますが、同時に、地域に住む人たちがどのように感じて、どういうことを望むのかがもっとも大切なことです。双方の話し合いの経緯を見守りたいと思います。

島の原風景を守るために

保良海岸(パンプキンホール真上あたり)海上保安庁訓練場建設風景

これまで変わってほしくないと思っていた風景が、どんどんと変えられていくのを目の当たりにしてきました。

切り拓かれることで安全に浜へ降りることができ、多くの人に親しまれる機会が増えたとしても、昔から土地に住んできた私たちからすると、浜辺を取り上げられてしまったような思いになります。

今回のケースは砂浜へアクセスしやすくするものですが、逆に施設を建てることで浜辺へアクセスしづらくなるケースもあります。沖縄県では過熱する海岸沿いのリゾート開発から、地域住民が砂浜に自由に出入りする権利を守るために「沖縄県海浜を自由に使用するための条例」がつくられています。

私たちにとってごく自然で当たり前のことも、行政上のしくみがないと守り切れなかったりします。いまやわずかになった宮古島の昔ながらの砂浜の景観を守るために、どのような仕組みがあれば良いでしょうか。

吉野海岸

宮古島市八重干瀬周辺一帯(池間島や島尻など北海岸も含む)を世界遺産にできないかと調査をすすめています。世界遺産という目標は大変高いものですが、その一環でまずは国立公園の指定を参考に環境保全と利活用のバランスをどうとっていくか検討するようです。

また、保良泉ビーチではマリン事業者で組合を作って、保良自治会と話し合いを重ねながら海岸環境の保全と利活用のルールづくりを進めています。

宮古島で残したい風景はどんなところがあるだろうか。どうすればそれを守れるだろうか。海岸は地域のものという意識も強いので、地域主体で取り組みがあるのが良いですが、地域社会の結びつきが弱まっている中で難しい面もあります。

条例で規則をつくるというのも一つですが、一律に規制をかけるよりは、協議会などを間に挟んで開発の慎重さにつなげる。昔ながらの原風景の残る場所をモデル地区としてソフト面からの保護をおこなう...といったアイデアなど活かせられないかと考えています。
また、どのような開発の在り方なら景観と環境に調和したものとなるのか、理想図を作っていくことも大切かもしれません。

地域住民の思いが優先されるとはいっても、ひとつひとつがつながっていくと宮古島全体のことにもなります。ぜひ多くの人に周知され、感心をもっていただき、多様な議論のきっかけとなっていってほしいと思います。