沖縄防衛局による保良訓練場見学会 参加メモ

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宮古島市では座喜味新市長となってから、陸自配備に反対する各市民団体より、防衛省による市民説明会の開催を求める要請が続いていました。

今さら開催する意義もないと感じているのか、防衛省から返ってきたのは気のない返事。その代わり地域住民を対象とした見学会の連絡が届き、クローズドにことを済まそうとする動きに批判の声があがるなか、本日、地元自治会を対象に現地見学会がおこなわれました。

過去、海上保安庁射撃訓練場の開設時に見学会を経験している保良自治会ですが、数人グループに分かれて施設内を歩き、取るに足らない質問でも丁寧に説明いただいた当時の記憶もあって、今回の防衛局の現地見学会は、あまりに形式的で閉鎖的なものに感じました。

また、福島みずほ議員、伊波洋一議員に立ち会いいただいた防衛省経済産業省との政府交渉に比べても、明らかに答えられないことの範囲が広がり、今回の説明会についてはデグレードしたと言わざるを得ません。


見学会は午前・午後に分けて開催されましたが、どちらも20数名ほどの参加。公民館からマイクロバスで移動し、訓練場内のテントの前で降車、その場で防衛局担当者による説明と質疑応答がそれぞれ30分ほどありました。午前の回は椅子もなく一時間ほど立っていたそうで、それなら公民館でやったほうが良かったのでは……という声もあがったとか。

私は午後からの回に参加しました。防衛局のお話は、各施設の大まかな説明、弾薬庫について安全であることの強調、これまでに寄せられた質問への回答など。


私からは次のような質問をしました。

── 弾薬庫格納のミサイルに『迫撃砲弾』があると説明されたが、当初説明会の『迫撃砲弾』の説明ページには『当該施設には保管しません』と書いてあります。説明が異なるが、整合性のある説明をお願いします。

(当時の資料を渡しましたが、返事はありませんでした)

──火薬類取締法は遵守するとしながら火薬量・保安距離・保安種別は言えないとのことだが、千葉県習志野市では火薬量が判明しているし、政府交渉時には宮古島駐屯地火薬庫近隣の保安種別を答えている。なぜ保良には言えないのでしょうか。

防衛局:
習志野のケースが例外的。宮古島駐屯地については何のことか分からない」

習志野市のケースは2009年時点です。10年ほど前は火薬量を言えたのが、現在は言えなくなったのだと思われます。火薬量を言えないとする法的根拠を尋ねましたが、省内のルールとのことでした。
宮古島駐屯地(千代田)の保安種別は第三種です。2019年政府交渉より。防衛省の回答だったと記憶しています。
※保良の保安種別について2019年政府交渉時には「申請中であるため答えられない」としていたことが、現在では「火薬量に関わることはすべて言えない」と説明に変化がみられ、短期間でも省庁ルールが変更になっていることが分かります。

──弾薬庫火災時の対応について、防衛省通達には火災標識第一群の火薬庫については、火災時においては消火活動をせず600m避難するように記載されているが、私の家は火薬庫から300m内にある。この場合の市民の避難や家屋の消火作業はどこが受け持ちますか。

防衛局:
「県や市と連携してやっていく」

──通達では600m避難するとしているが、県から出動要請があれば通達の制限を越えて救助活動できるということですか。

防衛局:
「それは、その時々で判断する」

お返事、しどろもどろでした。やるとは言えないのですね。


また、保管する弾体には地対艦ミサイルがあるので、これは成型炸薬弾となります。
火災の際に引火した場合の影響について伺ったのですが、質問の意図が分からないということで、質問を変えて、事故の際のシミュレーションを出してほしいとお伝えしました。しかし、能力が分かってしまうためシミュレーションは出せないとの回答でした。

避難計画を立てるのは自治体ですから、防衛省がシミュレーションはじめ影響範囲等、見積もりを出せないのなら、自治体も避難計画を立てようがないのです。避難計画に必要な情報を提供することと、防衛省の機密を守ること、両方が成り立たないのですから、地元住民としては「それならば、ここに配備すべきではないのでは......?」と素朴な疑問を抱かずにいられません。

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さらに参加者から、有毒ガスなどでないのか心配だと質問が出ました。これに対して防衛局は「いろいろな火薬があり細かくここでお答えできない」といい、容認派の方から「(有毒ガスがあるかどうか)それくらい自分で調べてこい」とヤジが飛んだので、つい口をはさんで「塩化水素ガスについてはどうですか?」とお聞きしました。

防衛局の担当の方は、火薬成分はいろいろなので……と曖昧にするので、「山口、秋田には影響範囲出してますよね?」と重ねて質問。「それについてはブースター落下地点など…」と聞いてもいない話にずれていくので、もうそれ以上の追求はしませんでした。

話はまだあります! 火薬類取締法に則り保安距離をはかる際に、3棟建設予定の火薬庫、全体棟ではかるか、個別棟ではかるかについて、経済産業省と省庁ヒアリングにおける防衛省と回答が異なっています。このこともお聞きしましたが、火薬に関しては一切答えられないと。経済産業省や、国会議員への防衛省回答では答えているのに。

結局、今回の見学会、開催したという既成事実をつくれればよく、火薬に関してなど、はじめから回答する権限をもたない立場の方で説明をおこなったということなのでしょう。


どの質問に対しても納得できるものがほぼありませんでした。

一応、評価できる部分もありました。施設ゲート周辺の県有地、建設工事にともない整備をおこなっていますが、傍目に見てもずさんなものです。これに関しては対応いただけるとのこと。また、地下水モニタリングも、市から要請があれば検討していきたい。宿舎建設予定地周辺の伐採を進めている林帯についても、可能な対応を検討したいとのことでした。

騒音測定については「やっている」と回答されていましたが、工事後、射撃場の運用が始まってからのことですよと念押しして聞くと、運用後については要請があれば考えるということ。防衛局の方は大変丁寧ですが、いわゆるごはん論法を多用されるので、かえって不信感を抱いてしまいます。

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訓練場施設と集落

駐屯地の方とは、参加時の個人情報取得に際し利用目的の明示がなかったことで、強い口調でのやりとりもありましたが、総じて説明にごまかしはなかったという印象を持ちました。地元住民として反対決議を出していますが、隊員の方からすれば望んでこの場所に配置されているわけでもないので、彼らにとってみても迷惑な用地選定であるかもしれません。

私は配備反対の立場として、これからも間違っているものは間違っていると言い、必要なものはきちんと求めていくべきだと考えています。けれどおそらく駐屯地の方々も、彼らの立場での最善をつくすでしょうし、そのことは疑うものでもないだろうと感じました。


最後に。避難計画について、訓練場の完成にともなって、市や県と一緒に検討していくという回答がありました。防衛省からすれば、国民保護計画は自治体の責任範疇なので、スルーし続けると思っており、ちょっとした驚きがありました。

けれど離島においてミサイル戦が始まれば、市民の避難はほぼ無理だろうというのが正直な思いです。明日にでもミサイル攻撃が始まると分かればまだしも、10分15分でものごとが動く状況下の中で、いったん公民館に避難し、そこから空港や港まで移動、飛行機・船で島外へ逃げるというのは、まず非現実的な話でしょう。5万5千人の市民を輸送する飛行機・船をどのように調達するのか、という点からまず現実性を考えていただきたいと思います。

結局、有事など起きない、防衛予算で公共工事ができれば良い程度の考えからの誘致だったのではないかと疑わざるを得ません。米中対立の状況をだれより憂いているのは、きっと私たち反対派の市民です。