陸自チャーターの民間船が航行不能となり水没した件の経緯について

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11月22日午後、宮古島市高野漁港付近の海上で、陸上自衛隊が訓練のため借り上げた民間船が天候不良のため走行不能となり、船長が手配した漁船に救出されました。
いかりを下ろした船は、船長がふたたび戻った時には流されて、同日17時頃、パトロール中の海上保安庁の航空機によって発見されています。その日のうちに巡視船が派遣されたものの、民間船は19時頃に水没しました。

この件を私は人伝てに知って、新聞を見たのはその後でしたが、意外にも当日紙面に取り上げたのは地元一紙だけでした。
なおも翌日、遅れて掲載した地元紙、県紙の扱いは小さく、いよいよ私が無視すればうたかたに消える話になってしまうのではないかと危惧して、関連機関のあちこちに電話を掛けたのでした。

宮古島市に情報共有しましたか?
②リリース、事故報告書など対外的なものは出しますか?

11/25(木)
【沖縄防衛局】

  • 駐屯地の方に聞いてください

宮古島駐屯地】

  • 市には共有した
  • 海上保安庁が調査している、答える立場にない

宮古島市

  • 書面ではなく、電話で連絡があった
  • 市として対応は今のところない
  • 事故の対処など海上保安庁預かりになっているようだ

海上保安庁

  • 調査結果がどこに提出されるかは確認して折り返す

陸上幕僚監部

  • 確認して折り返す

11/26(金)
陸上幕僚監部
宮古島駐屯地からの折り返し電話で回答

  • 訓練は自衛隊 / 海上保安庁 / 高野漁業組合 3者で調整した
  • 宮古島市へ訓練の周知は?
    > 市の敷地は訓練に使用しないため連絡していない
  • 市や県へ事故報告書を出すか
    > 要望として上に伝えておきます

海上保安庁
※経緯報告書をもって説明

  • 事故対応は船長(民間人)と調整している
  • 調査報告書を仕組みとしてどこかに提出・公開するものとはなっていない
    > 情報公開請求などを利用して知ることはできる

各方面に確認をして、今回の件は自衛隊訓練の一環でおこなわれたとのことですが、事故としてはチャーターした民間船のもののため、陸上自衛隊の事故という扱いがされていないということが分かってきました。

そのため、事故報告書や再発防止策など、防衛省や駐屯地からの報告が市に出されることは無いようです。

一般企業に置き換えると、企業のプロジェクトの一環で外注を受けたフリーランスの業者が事故を起こした時、事故の責任はフリーランスとなるでしょうか。みずほ銀行がシステム障害を起こした時、当の銀行は姿も現さず、ベンダー企業が謝罪するということがあるでしょうか。

金融庁による業務改善命令に「適切に経営管理していく必要があったが / ガバナンス上の問題点が認められる」とあるように、みずほ銀行には管理体制上の責任がありました。仮にベンダー企業側に過失があったとしても、一義的に社会的責任は管理統治の頂点である発注元が負うことが当然です。

書いていて不安になりますが、そうではないですか? 行政の言うことがあまりに民間と異なりすぎて、感覚がおかしくなりそうです。

今回、訓練のあった11月22日は、強風・波浪注意報が出されており、風の強さは15m~20mあったと聞いています。強風の中を出航する判断の責任は、自衛隊と民間船の船長のどちらにあったのでしょう。もしも仮に民間船の船長にその責任があったとするなら、危機管理を民間にゆだねている時点で、国防の任務を負う立場として大いに問題があるのではないですか。

こういった細かな問題点を省みて、再発防止策を立てるためにも事故報告書が必要ですが、おそらく防衛省自衛隊もその気はないのでしょう。電話口で必要性を問うと、駐屯地の担当の方は「ご要望としてお聞きします」と答えられていました。要望を受けたから出す、出さないというようなレベルの話ではないのですが…。

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また今回の聞き取りの中で、責任所在の話として、「では、民間船の船長さんが、この話を断れば良かったということですか?」とお聞きすると「そうです」という回答がありました。このことが、陸自配備のすべてであると同時に思いました。

国のやることだから大丈夫だろうと、あるいは、国のやることには物申せないと忖度して、細かなことに目を瞑って配備を受け入れているのが宮古島の現状です。

けれども真実は、受け入れるのも断るのも「あなた方の判断」です。何かあった時の責任は、自分たちで負うしかないのです。

前市長は「陸自配備は国の専権事項」として、あたかも自治体が判断したり国と交渉することができない立場であるかのように振る舞いました。しかし実際には、国と地方自治は対等であることは地方自治法で定められています。翻って言えば、配備を受け入れることは、地方自治体の責任において判断されるものなのです。

「国の専権事項」とした言葉がいかに私たち市民を欺く言葉だったか。たった4年前まで、この欺瞞の言葉が平然と議会で使われていたということが、あまりに情けなく感じます。

gendai.ismedia.jp

自衛隊の輸送や訓練に民間業者が使用されているという記事です。

今回、宮古島で起きた小さな事故は、各地で起きつつある傾向のひとつでもあります。輸送や訓練において事故が起きた際、責任をどちらが負うのか、また民間が負うものである場合、それは民間業者が負える範囲に限られるものなのか。

忖度せず交渉していくべきだと思いますし、今夏6月にあった、宮古島へのミサイル輸送を民間船舶業者が連名で運搬を拒否した件のように、積み荷の中身が分からない等、リスクの検証ができない状況の場合は依頼を受けないという選択も、当然あってしかるべきものです。

参考資料
miyakoshinpo.com
agora.ex.nii.ac.jp