保良弾薬庫土地裁判経過報告・重要土地等調査規制法案の勉強会

保良訓練場・弾薬庫の土地裁判について経過報告

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宮古島・保良の弾薬庫建設地は、もとは採石場でしたが、さらに元をたどれば畑など複数の土地所有者の土地でした。

しかし弾薬庫建設にあたって採石をおこなっていた会社により、まとめて防衛省に売却されてしまいます。売買契約がないのにそれが可能となったのは「時効取得」という法律の仕組みを利用したからでした。

もともとの土地の持ち主が「被告」に

「時効取得」とは、その土地を長年(20年以上)、自分の土地と認識して使い続けていた場合に、土地利用者の所有となるというものです。基本的には裁判所に時効取得を申し立てて、異議が出ず認められた場合に、取得が成立することになります。

このケースでは、砕石会社側が「原告」、畑などの土地所有者だった方々は「被告」となります。地主のほとんどは、異議申し立てせずに土地を手放すこととなりました。そのうち複数の地主が「被告」として、土地の権利を、採石会社とあらそうことになったのです。

一審では、複数の土地のうち一つが勝訴となりました。採石会社は控訴して、現在、控訴審で係争中です。7月にも結審するということで、今回はその裁判の経緯報告がありました。

一審で勝訴した土地については二審でも新しい証拠や論拠は出ておらず、一審をなぞる内容となっているとのことで、通常であれば一審の判決内容が尊重されるはずとの説明でした。

時効取得とその立証

争点となるポイントは「20年間、自分の土地と思い込んでいたかどうか」です。
しかし施業案において「自己所有」となっている土地がある一方で、この土地については「契約地」と書いてあり、「自分の土地と思い込んでいた」とは通常ならないと思われます。

またそのほか土地について、一審ではこちらが敗訴となりましたが、控訴する価値はあると、引き続き裁判所での申し立てをおこなっています。これらの土地については、採石会社側は一部使用の事実をもって、土地全部の取得を主張しています。

時効取得は、長年の利用をもって土地利用者に所有権を認めるものです。
当然、もとの土地所有者と所有権が競合しかねないですから、時効取得が認められるかどうか、本来であればもっと慎重に判断されるべきものと思うのですが、一審では、一部使用において全部取得という判断がなされたのでした。

今これらの土地の所有権が審議中で、ほぼ提出物も出そろっている中で、7月には結果がでる見込みです。良い結果を待ちたいと思います。

 

重要土地等調査規制法案について

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係争中の土地についての経過報告とあわせて、重要土地規制法案についてのお話も聞かせていただきました。

6/14現在、国会審議中の重要土地規制法案。基地など重要施設の周辺1km・国境離島を「注視区域」「特別注視区域」に指定することができ、施設の機能阻害のおそれがあるときは、土地利用者の調査、中止命令が罰則付きでおこなうことができるとする法案です。

立法事実がなく、予見可能性も乏しい法案

当初、外国人投資家による土地売買を抑止するためと説明されましたが、外国人投資家による土地売買により施設機能に影響が出た例はないと報告され、さらに外国人投資家による土地売買を禁止することは「内外人平等の原則」に反するため、この法律を作ったからといって、規制できるものではないと言われています。

さらに、どこまで調査対象となるか、どの情報までを取得できるのか、施設機能の阻害とはどういうものなのか、規定がなく、国会においても「お答えできない」と言う始末。それでは予見可能性が十分にないとの指摘もされ続けてきました。

法案の名称には「土地」とあるので、調査対象は土地所有者かなと思ってしまうのですが、「土地」とは保護すべき土地のほうにかかるので、旅行者など、土地所有者に限らず対象となってくる可能性はあります。また、「機能阻害行為」が何か分からないままに調査されてしまうおそれもあります。

市民監視の法案

自衛隊イラクに派遣したおりには、反対派の人たちの情報をリスト化していたことが分かっています。住所や氏名にとどまらず、交友関係や、税金の払い込み状況まで把握されるおそれがあります。いったい何のために? 収集の端緒を問うと、 防衛省「手の内は明かせない」とのお答えだったとか。

参加者からの質問に答えて、赤嶺弁護士が、この法律の懸念されるところは、自分の知らないうちに監視・調査されることとお話されていました。喜多弁護士からさらに、こういった調査が関係者におよび、住民どうしの監視や密告を強いていくものだという説明もあり、心穏やかには聞けない話ばかりでした。

保良の係争中の土地に関連して言えば、基地阻害行為とみなされれば、土地利用中止を罰則付きで命令でき、国による買取努力まで発生するわけですから、最終的に国に買い取らせるよう圧力がかかっていくことが考えられます。今回のお話の中では、少なくとも調査対象になっていく可能性はあるのではないかということでした。

土地規制法案、端的に言うと…

(平時より)安全保障・軍事優先 > 基本的人権
生活環境の改善 ← 国防を名目に規制されていく。

まとめとしてお話くださった内容が、的を得ていると思いました。

平時より国防を優先して、それに競合する基本的な人権さえ抑圧していける。
騒音はじめ生活環境の改善をうったえていくことさえも、国防の名のもとに、できなくなっていく。

もっと審議が必要と言う声も聞かれますが、「何のための法律か」という問いにもこたえられない状態の法案を、間違っても通してはいけないと思います。

国会では、6/14本日にも通そうとする動きがありましたが、委員長解任決議が提出され、内閣委員会は散会しました。
明日6/15へ持ち越しとなった審議ですが、野党党首一致で、明日にも菅内閣不信任決議案を提出するとのこと。
解散となるか、受けて会期延長となるか。緊迫した状況が続きます。

このあたりの見解も伺いましたが、不信任案が成立するには与野党の賛同も必要のため、不信任案を頼みの綱と考えるのではなく、やはり根本としてこの法案の廃案を強くもとめていくべきだというお話をしてくださいました。

日数もほとんどない中ですが、なんとか声をあげて廃案に追い込んでいきたいとあらためて思いました。

参考 -----

以前の裁判経過報告はこちら